琥珀はどう言葉をかけるか、考えながら話し出す。


「金剛は…子供っぽいやつだから…石に夢中になると他に頭が回らないんです。ラピスラズリの件が終わるまでは、待ってやってもらえませんか。」


静かな琥珀の声に、紅玉の涙混じりの声が返す。


「貴方もお聞きになっていたでしょう。イメージモデルがいる、と。金剛様は石に夢中なのではない、そのイメージモデルに夢中なのではありませんか?」


琥珀は言葉を返せない。


「ことによると…金剛様の心を支配しているのは、ラピスラズリの似合う女性なのかもしれない。翠玉が気をつけろ、と言ったのはこのことだったんだわ。私に興味がないばかりか、他の女性に心を奪われるなんて!!」


琥珀は必死に言葉を探す。


「金剛が、もし女性をイメージモデルにしたからといって、恋だとは限らない。それに紅玉様、貴女は美しい魅力的な女性だ。悲観することはありませんよ、金剛は、戻ってきます、きっと…。」


紅玉の涙に光る眼が、琥珀を貫いた。


一瞬の間に、琥珀の胸に紅玉は納まる。


何が起こったのか解らなかった。
琥珀はあまりの出来事に狼狽している。


「こ、紅玉様!?」

「琥珀、と言ったわね。しばらくこのままでいて。誰にも見られないうちに、少しだけ泣かせて…。」


紅玉の震える小さな肩を、琥珀は遠慮がちに、壊してしまわないように、優しく抱きしめた。