「紅玉様!!」


本気で走れば琥珀の方が早い。
琥珀はすぐに紅玉のもとに追いついた。

紅玉の手を掴んで引き止める。

瞬間、庶民の自分が王族の手を握る、というかなりの無礼を働いていることに気付いた。
ましてここは王宮内である。
しかし、動いてしまった手は止まらなかった。

琥珀が紅玉をこちらにむかせようとすると、硬い声で拒まれた。


「見ないで、お願い。」


このまま放っておけるわけが無い。
琥珀はできるだけ優しい声で紅玉に話しかける。


「紅玉様…なにか辛いことがあったのなら、お話下さい。聞き役くらいにはなれます。」


そう言って、琥珀は王宮内でも人気の少ない場所を探し、紅玉の手を引いて連れてゆく。

人気のないところにつくと、紅玉の顔を見た。
泣いていた。
あの凛として物怖じしない姫が、泣いていた。