9時半。

「瀬名、そろそろ行くぞ。」

田中君に声を掛けられて、

「はい。」

と私は立ち上がった。

部長以外の営業トーク、初めて聞く。

わくわくとドキドキが入り混じった不思議な感覚。

私たちは、並んでエレベーターに乗った。

「田中君、4年目で成績トップってすごいよね。」

私が言うと、

「これでも努力してるんだぞ。
お前にはふざけてるようにしか見えてないかも
しれないけど。」

と笑った。

「ふふっ
知ってるよ。
だから、私もがんばらなきゃ。
開発は努力すれば、必ず結果に辿り着くけど、
営業は相手があるから、努力が全部報われる
わけじゃないもんね。」