「颯樹! いい加減目を覚ましてよ!」


あたしは恐怖心を押し込めて、懸命に声を上げた。


ここで黙ったままでいたら、きっと自分自身が後悔するから。


「目を覚ます?」


颯樹が不思議そうな顔をこちらへ向ける。


「こんなことするなんて、颯樹らしくないよ」


言いながらも声はどんどんしぼんでいく。


颯樹があまりに真っ直ぐ、純粋にアプリを楽しんでいるから、自分の言っていることの方がおかしいのかと感じられてしまった。


「貴美子、悪いけど俺らしいってなに?」


「それは……。誰にでも優しくて、勉強熱心で……」


そう言いながらサッカーの練習を頑張っていた颯樹の姿を思い出していた。