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南が教室から運び出されると、あたりは騒然としていた。


なぎ倒された机と椅子だけが生々しく残っている。


南の前の席の子が震えながらもその椅子を起こそうとしていて、あたしは咄嗟に駆け寄って手を貸した。


いつも持っているはずの椅子と机がやけに重たく感じるのは、自分の体から力が抜けてしまっているからだろう。


さざ波のような話し声が聞こえ始め教室内に、カツンッと何かが落下する音が響いた。


それは南のスマホだった。


机の中に入れていたようで、起こした拍子に落ちてしまったようだ。


あたしはそれに手を伸ばし、画面が視界に入った瞬間硬直していた。


南のスマホの画面には《タイムオーバー》という文字が表示されていたのだった。