「貴美子、ちょっといいか?」


放課後、颯樹に声をかけられてあたしは教室から出る足を止めた。


「なに?」


「移動しよう」


あたしの質問に答えず、颯樹はあたしを追い越して歩き出す。


一体どうしたのだろうと思ってついて歩くと、たどり着いたのは校舎裏だった。


あたしたち以外にひと気はなく、ジメジメとしている狭い空間。


「一体なに?」


そう訊ねると、颯樹は振り返った。


その頬は赤みがさしていて一瞬戸惑ってしまう。


颯樹はやけに緊張している様子だし、もしかしてという予感が胸をよぎった。