颯樹の心はずっと前から悲鳴を上げていたのだろう。


けれど、こうして泣く事すら許されなかった。


自分自身が誰かに甘えることを許してこなかったのかもしれない。


そんな時に現れた《絶対命令アプリ》に、颯樹は魂を奪われてしまったんだ。


だけど、大丈夫。


あたしはそっと颯樹の体を抱き寄せた。


颯樹があたしの腕の中で戸惑った雰囲気をまとわせる。


それでも気にせず、颯樹の体を強く抱きしめた。


「大丈夫だよ颯樹。颯樹は十分頑張ってる。大学だって、きっと合格する」


言いながら、颯樹の頭を優しくなでた。


「子供扱いかよ」


颯樹が愚痴るが、辞めるように命令はしてこなかった。