「俺の、どこが好きなんだよ」


颯樹があたしから手を離し、そう聞いて来た。


「どこって……」


あたしはまた思い出す。


好きだったころの颯樹の姿を。


「どうせ勉強ができるとか、部活ができるとかだろ」


言い当てられてしまい、あたしは黙り込んだ。


それは肯定を意味していて、颯樹は強く奥歯を噛みしめたように見えた。


「前にも言ったと思うけど、あれは全部教師からもらう評価の為だ」


「……わかってる」


それでも好きだった。


だって、あたしは颯樹のその顔しか知らなかったから。