「ねぇ、貴美子」


英語の教科書とにらめっこをしていたとき、不意に声をかけられてあたしは顔を上げた。


いつの間にかクラスメートの伊藤ヒナがあたしの机の前に立っていた。


その手にはスマホが握られていたので、あたしは警戒してヒナを見つめる。


ヒナはおっとりとした性格で、王様と奴隷など似合わない。


「なに?」


「あたしも貴美子の言ってたことを信じるよ」


突然そう言われてキョトンとしてしまったが、アプリの消し方についての話をしているのだろうと、ピンと来た。


「本当に?」


思わず机に身を乗り出してそう聞いた。


仲間は多ければ多い方がいい。


「うん」


ヒナはなんのためらいも見せずに頷いた。