振り返ると青ざめて立っている歩がいた。


「冗談だよな?」


そう聞く声が震えている。


一度命令されればそれは必ず実行しなければならないと、歩もよく理解しているからだ。


「本気。ツバサを殺して」


そう言った瞬間、下腹部を触れられたときの不快感が蘇ってきて顔をしかめた。


気持が悪い。


ツバサに触れられた部分を今すぐ切断して切り離してしまいたいほどだ。


体の一部を他人に触れられただけだというのに、ここまで不快になるものなのだと初めて理解した。


ツバサを発端として日本中の、いや、世界中の性犯罪者への怒りが湧き上がる。


「命令はそれだけ。早く行って」


あたしは歩へ向けてそう言ったのだった。