次の相手はクラスメートの福田歩(フクダ アユム)だった。


歩はボクシング部に所属していて、早めに引退はせず、夏休みが終わるまでは主将を務めると言っていた。


あたしは大きくため息を吐き出した。


歩は普段温厚な性格だけど、王様となるとどう変化するかわからない。


颯樹があれほど豹変しているのだから、同じように変わるかもしれない。


よりによって歩が相手だなんて、最低だ。


体が鉛のように重たく感じられた時だった。


「ちょっと、いいか」


後ろからそう声をかけられて振り返ると、クラスメートの谷川ツバサが立っていた。


黒縁メガネをかけたツバサはA組の中でもトップクラスの成績を持っている。


「ツバサ、どうしたの?」


「さっきの話が気になって」


そう言いながらツバサはあたしの前を歩き出した。