あたしが王様になったところで、命令することなんてなにもなかった。


紗菜は自分の机に戻り自習を始めている。


あたしも同じだった。


「おいおい、せっかく奴隷を手に入れたのにもったいないな」


あたしの席に近づいて来てそう言ったのは颯樹だった。


顔を上げ、颯樹を睨み付ける。


「なんだよ、そんなに怖い顔して」


「あたしは王様なんかじゃない」


「はぁ? でも勝っただろ。1日紗菜を奴隷にできる」


「紗菜はクラスメートで、奴隷じゃない」


あたしがそう返事をすると、紗菜が少しだけみじろきをするのが見えた。