「どうして……ですか?」

レインの瞳は、悲しみに染まる。

自分が何かしてしまったのだろうか?だからレオンは出ていけと言ってるのだろうか?

そんなレインの考えを読み取ったのか、レオンはレインの肩に手を置いて、視線を合わせる。

「良く聞いてね。君は、ここを出て一人でティアを育てなきゃいけない。そう決まっていたんだ」

「?」

「ティアが生まれた今、君は龍の谷を目指さなければいけない。君が旅立つ時が来たんだ」

不安そうにレオンを見上げる。何を言っているのか良く分からない。

けれども、レオンの必死さは伝わってきた。

レオンは棚から背中に背負えるリュックを取り出して、果物や必要なものを詰め、弓矢をリュックに引っ掻ける。

「レイン、強くなりなさい。心を強く。そして、何があっても誰も恨んではいけない。そして、どんなに理不尽なことがあっても、絶望してはいけない」

レオンが散々レインに言い聞かせてきた言葉。

「師匠……私はまた、ここに帰ってきてもいいですか?」

ティアと別れた後、あるいはティアと共に。

「………うん」

レオンは悲しそうに微笑んだ。その顔は、ティアナを思い出させる。

「さ、いきなさい」

背を押され、レインはティアを抱き上げる。

『ピギィ?』

「ティア。………よ」

レオンはティアの頭を撫でながら、小さく何かを告げた。

「……今まで、本当にありがとうございました」

レインは師へと頭を下げた。

そして、ティアを抱き抱えたまま、レオンに背を向ける。

「……こちらこそ、ありがとう」

「……っ」

その言葉を聞き終えると、レインは小屋を出ていった。

「……僕の、愛弟子。君は自慢の娘だ」