レインは龍の谷の長老に会うため、龍族の祠へと案内された。

『良く来たの。娘』

レインは床へと膝を付き、背筋を伸ばしてから頭を下げる。

「お初にお目にかかります。レインと申します。突然の来訪にも関わらず、私を受け入れてくださったこと、心より感謝申し上げます」

『ホッホッホ。実に礼儀の行き届いた娘じゃ。気に入ったぞ。……お主の役目は、龍達を癒すことじゃ。この谷にいる以上、何かしらの役割はないとの』

長老の言葉に、レインは顔をあげた。

「癒すとは、怪我を治すということですか?」

『それもあるが。一番は安らぎを与えることじゃな。お主にはその資格がある。……お主が他の者達と心を通わし、触れあうだけで良いじゃろう……』

「?つまりは、他の方々のお世話をするということですか?」

首を傾げるレインに、長老は頷く。

『まぁ、世話というよりは、話し相手になってやってくれれば良い。お主も幼子の面倒を見るので精一杯じゃろうて』

「?はい。お話し相手でしたら、いくらでもお引き受け致します。……もし良ければ、長老様のお話し相手もしたいです」

ふわっとした笑顔を浮かべる。

レインは誰かと話をするのは大好きだ。

『ほっほっ。それは嬉しいことを言うてくれるの。では、頼むとしようかの』

「はい!」

『……ところで、お主は歌は得意か?』

「……姉が、歌うなと言っておりましたので、得意と言えるほど、歌ったことはありません」

恐らく自分は音痴なのだろう。そう思って、他所で歌を聞いても、歌いたくなっても歌わなかった。

『なるほどの。ちょっとこの音を真似てみぃ?』

「?はい」

『~♪』

長老の出した音程を聞き、レインも鼻歌を歌う。

「~♪」

『……ふむ。何の問題もないの。わし達の話し相手の時に、歌ってもらえると有り難いの。お主が思っているよりも音感に優れておる。そのうち、自分だけの歌も歌えるようになるじゃろう』

長老の言葉に、レインは不思議そうに目を瞬かせた。

『では、お主には『歌姫』の称号を授ける。これからこの龍の谷の者として、よろしく頼むのう』

「はい!」


そして、龍の谷でレインは日々を過ごしていく。

「おはよう。ティア!」

『おはよう!レイン!』

上手く言葉を組み合わせて教えると、ティアは長い言葉も喋れるようになってきた。

「さっ!今日も長老様と皆の所に行こうか!」

『御意!』

前よりも発音が滑らかになったが、その返事はやっぱりちょっと笑ってしまった。