『一件落着ってことだな!』

『ピギィ!』

それぞれの主を見て、ゼイルとティアは頷き合った。


「ここには、他にどれくらい龍がいるの?」

「野生の龍は、人間よりは少ない。ここにいるのは、大体二十匹だ」

思っていたより数は少なく、レインは驚いた。

「生まれたばかりの龍は、好奇心が旺盛で、勝手に人里へと降りてしまう。そこで、人間に捕まることが多い。後は、嵐の日に卵が流されてしまうこともある」

アルの発言で、レインは思い出した。

「そう言えば、ティアを見付けたのも、嵐の次の日だった。……てことは、やっぱりここにティアのお父さんとお母さんがいるのかな?」

レインの質問に、アルは首を振って答える。

「卵が産まれれば、僕はすぐに数を数えて、長老様に報告する。だが、金色の卵は見たことが無かった。それに、成長の早さからして、ここの龍ではない可能性がある」

「……そしたら、ティアも私と同じ、お父さんとお母さんの居ない子になっちゃうのかな」

自分は両親を覚えていないし、育てられた記憶もない。

だから、自分が得られなかったものを、ティアには与えてあげたかった。

「……親なら、お前がいれば充分だろ」

「でも、私がお母さん出来ても、お父さんがいないのは寂しいと思うよ?」

血の繋がらない師は、レインにとっての父だ。

だが、もしティアに家族がいたら、血の繋がった両親との絆と言うものを知れたかもしれない。

「なら………が………てや……いい」

「?何?」

ごにょごにょと呟いたアルの言葉は、レインには聞き取れなかった。

『僕が代わりに父親になってやっても言い。だってさ』

地獄耳の如く耳が良いゼイルがそう言うと、アルは素早く槍でゼイルの頭を小突いた。

『あでっ!』

「誰もそんなこと言ってない!」

「ア、アル。ゼイルの頭叩かないであげて?……アルにはゼイルがいるから、お父さんやりたいと思わないってちゃんと分かってるから」

レインに宥めるように言われ、アルはしまったと思った。

どうも、レインに素直になるのは難しいらしい。

そもそも人間の、それも女の子と接する機会が無かったので、仕方ないと言えば仕方ないが。

「……ゼイルにも、母親が必要だな」

『え?おいらもう大人―』

「煩い」

ゼイルの言葉を阻み、アルは続ける。

「お前がゼイルとティアの母親代わりで、僕は父親代わり。これなら良いだろ」

「!うん。ありがとう!」

実は意味は全く分かっていないが、ティアの親代わりをアルもやってくれると言うことは分かったので、素直にお礼を言う。

『ま、いいか』

「改めてよろしくね!ゼイル」

『…………あ、何だろ……何か、泣けてきた』

母親が確かに欲しいと思ったことはあったので、ちょっとだけゼイルは感激した。

もう、人間の年齢に置き換えると、二十代位だが。

『ピギィ!』

ティアも、意味が分かってるのかいないのか、ピョンと飛び上がった。