「はぁっ!」

アルは素早く竜騎士に走り寄り、槍を横へ振り下ろす。

だが、竜騎士はそれを避けた。

「っ……はっ!」

槍を両手で構え、勢いよく地面に突き刺し飛び上がると、そのまま竜騎士の背後へと回った。

首筋へと槍の切っ先を当てる。

「……今度は、僕の勝ちだな」

肩の傷がまだ少し痛むせいで、動きが多少鈍くなったが、それでも男の背中をとれたと思う。

だが―。

「その程度で勝ったつもりとは、龍の守護者が聞いて呆れる」

「な―がはっ!」

槍の切っ先を掴み、それを勢いよく引いて体をひねり、アルの溝内に膝を叩き付ける。

「げほっげほっ!」

槍を引いた時の力の強さと、その後の動きの早さに驚き、反応が遅れたため、アルは地面へと転がった。

叩き付けられたせいで、肩の傷が開いたのか、酷く痛む。

「………」

竜騎士はアルの側へ寄ろうと一歩踏み出す。

その時―。

「!……大人しくしていればいいものを」

「……それ以上、私のお友達を傷付けないでください」

ヒュンッと放たれた矢を左手で掴み、竜騎士はレインを見る。

「俺と戦うつもりか?紅花村の時のようにはいかないが?」

「………」

レインは勝てるとは思っていない。だが、勝てるか勝てないかは今は関係ない。

彼女にとって今一番大切なのは、目の前の自分とティアを守ろうとしてくれた人を助けることだ。

レインは弓を構え、矢を引いて竜騎士と向き合う。

「………っ」

矢を放とうとした瞬間、動きを先読みしたのか、竜騎士がいつの間にか目の前にいた。

「!―あ!!」

咄嗟に反応できず、弓を叩き落とされ、大剣を首筋に当てられる。

「赤い髪の忌み子。姫様の命により、城へ連れていく」

「………」

竜騎士の目的は、自分を連れていく事であって、殺すことではないだろう。

だが、下手な動きは禁物だ。自分でなくても、アルを傷付ける可能性がある。

嫌な汗が流れる。