「………赤い……髪……」

昔見た、自分以外の赤い髪。

銀色の龍に乗り、槍を向けてティアを奪おうとした少年。

髪が少し伸びたのか、女の子のように見えるが、間違いなく三年前に会った人で、レインの記憶に濃く残っていた人だ。

「!」

レインは少年の様子がおかしいことに気付いた。

少年はぐったりとした様子で、岩へと体を預けている。

側に寄って顔を覗きこむと、額からは汗が流れているし、頬も少し赤い。

「はぁ……はぁ……」

呼吸も不安定で荒く、左肩には何かで切られたような傷がある。

「怪我してる。それに、熱も出てるんだ」

レインは少年の額へと手を当てる。そして、自分の額よりも随分熱いことに気付き、急いでリュックから薬草を取り出す。

すぐに煎じなければいけないが、水か氷で額を冷やさなければ。

「布は……これでいいか」

紅花村では、ろくに買い物が出来なかったため、綺麗な布が無い。

取り敢えず、レインの腰に巻いてある帯を外して、それを包帯の代わりに少年の腕へと巻き付けた。

時間が経っているだろうが、出血はまだ酷い。とにかく血を止めなければ。

「……これで良いかな。ティア、この子を見てて!」

『ギョイ!』

新しい言葉が出たな何て思いながら、レインは邪念を振り払い立ち上がる。

一刻も早く、綺麗な水を手に入れてこなければ。

「……っ!」

レインは来た道を急いで走った。刺さってる矢を目印に走り抜け、整えられている一本道へと出ると、今まで歩いてきた道へ走る。

ここに来る途中。山から水を引いている水のみ場があった。恐らく旅人のためにあるものだろう。

(速く……もっと速く!)

息が苦しくなるのを感じながらも、レインは走っていった。