「竜騎士」

「はい」

セレーナの部屋に呼ばれ、竜騎士はひざまずく。

「………今日ね………リトが死んだそうよ」

「……貴女様の、ご婚約者であり、従弟でもある方ですね」

竜騎士の言葉に、セレーナは頷く。

「……どうして、お母様も神龍も、私のものを奪うのかしら?」

「………」

セレーナの言葉に、竜騎士は答えられない。

「でも、もういないなら良いわ。私には、貴方がいるもの」

「……はい」

セレーナは竜騎士へと右手を伸ばすと、ニコッと笑みを浮かべた。

「竜騎士は私を裏切らない。私の言うことは何でも聞いてくれる。竜騎士は私の味方よね?」

「………はい」

手の甲へと誓いの口付けを落としながら、竜騎士は思う。

(この方は、いつから歪んでしまったのだろうか?)

自分を助けてくれた幼い頃、彼女はこんなでは無かった。

部屋からこっそり抜け出して、自分に会いに来る。無邪気で、天真爛漫な性格の、とても愛らしい姫だった。

だが、年月を重ねるごとに、狂気のようなものが見え隠れする。

「そう言えば、紅花村って所に行ったんでしょう?どうだったの?」

「……忌み子と呼ばれる娘と会いました」

結局、あの後レインを逃し、やむ無く城へと引き上げた。

「そう。忌み子…………ふーん、会ってみたいわ!」

「何故ですか?」

「だって、その子は皆から嫌われてる可哀想な子なんでしょう?だから、会いたいの。今度見つけたら、その子を城に連れてきて頂戴!」

悪戯を思い付いた子供のように、セレーナは笑った。

「………仰せのままに」