どれくらい歩いたのか、レインの膝はガクガクと震えてきた。

ノノンは大丈夫なのだろうか?また会えるだろうか?

今日は本当に、色んな事があった。

(……人に飼われた、哀れな竜達)

あそこにいた竜が、どこか虚ろだったのは、きっとあの竜水を飲ませられ、育てられたせいだ。

生まれてすぐ翼を切り落とされ、竜水を飲まされ、人の思うままに生かされている。

まるで、出口の無い鳥籠に閉じ込められた鳥のようだ。飛ぶことも許されず、人間の与えたものしか食べられない。

(もし、私がティアを見付けなかったら、ティアも村の人に売られて、ここで翼を切られて、あんな変な水を飲まされていたの?)

『ピギィ?』

こちらを見上げるティアに、レインは泣きたくなった。

「……大丈夫。ティアは渡さない。あなたを飛べなくしたりしない。あなたは自由でいいんだよ」

仲間と共に、自由に空を飛ぶ姿をレインは想像する。それは、どんなに素敵なことだろう。

歩き続けていると、上り坂になっていた。レインは足を無理矢理動かして坂を上っていく。

たが、体力に限界がきたのか、その場に膝をついた。

「はぁ、はぁ………うっ……」

近くの木へと体を預け、リュックから薬草を取り出す。

すり潰して傷へと当てると、ジンと染みた。

「………ふぅ」

息を吐いて、来た道を振り返る。誰も追ってくる様子は見られない。

『ピギィ!』

「……ちょっと………休憩………しよ…………ぅ」

瞼が重くなり、ティアを抱えていた腕は、だらりと下がった。

『ピギィ?ピギィ??』

ティアはレインの回りをウロウロしている。

「………すぅ……」

レインは小さく寝息をたてているが、顔色が悪く、額から汗が大量に流れている。

『ピギィ?ピギィ………ピギィィィィィ!』

ティアの叫ぶような声が、夜空へと響いた。