暫く卵の前で、三人はジッとしていた。

父親が来たせいなのか、ティアは動かない。

「さ、生まれるぞ」

その言葉と共に、卵はグラグラと動きだし、一斉に割れる。

ティアの時は随分時間がかかったが、竜の子供達はとても早かった。

『ギャン!』

『ギャォーン』

ティアの鳴き声とはまた違う。何だか掠れた声だ。

レインの目の前の卵が割れ、竜がピョンと顔を出した。

「……!!」

「どうだ?可愛いだろ」

レインは目を見開いていることしか出来なかった。何故なら、赤ん坊はティアと全く同じ姿で生まれたのだから。

大きさは違えど、ティアと同じような姿―つまり、翼の生えた龍。

(どういうこと?この子達、皆翼がある)

声もなく見つめているレインを尻目に、父親は持っていた袋の中に赤ん坊を詰めていった。

「!あの―」

「これから儀式の間に連れていくんだ。残念ながら、見せられるのはここまでだな。出て行ってくれ。ノノン、お前も家に帰りなさい」

それだけ言うと、父親はドアを開けて出ていく。

レインは、足がカタカタと震え、その場に膝をついた。

(どうして?……赤ん坊の竜は龍なの?)

龍と竜は同じなのだろうか?もしそうなら、何故翼が無くなったのだろうか?

大人になったら無くなるのだろうか?

様々な疑問が沸き上がり、レインは体を抱き締めて震える。

ふと、恐ろしい考えがよぎったのだ。

『ピギィ?』

「お姉さん、大丈夫?」

こちらを気遣うティアとノノン。

レインはリュックを開けて、ティアを覗きこんだ。

「……ティア」

『ピギィ!』

抱き上げると、心が落ち着いていく。

(…………確かめなきゃ)

ノノンの父親を追い掛けなければ、儀式の間という所に行かなければ。

「……ノノン。儀式の間に、案内して?」

「……分かった!」