指で掬ってみると、ハチミツのようにトロリとしていた。

鼻に近付けて臭いを嗅ぐと、色んな薬草の臭いがする。
特に鼻にくるのは、酸っぱい臭いだ。

「これ、薬草を細かく潰して、水に混ぜたものだ」

水に色が付いてるのは、その薬草のせいだろう。

「使ってる薬草が分かればいいんだけど」

「お父さんの仕事場に、何か草が沢山置いてあるよ?見に行く?」

「でも、ノノンのお父さんは仕事場に入れてくれないんだよね?」

レインの言葉に、ノノンはフフンと胸を張った。

「入れてくれないなら、忍び込めばいいだけだよ!」

「……ノノンが叱られちゃうよ?」

「大丈夫!もう何度も叱られてるから」

何故か自慢気なノノンに、レインは苦笑いする。

だが、人様の仕事事情に首を突っ込むのは良くないが、レインはどうしても知りたかった。

もしかしたら、竜達が虚ろなのはあの水が原因ではないかと。

「じゃ!仕事場に行こう!」

「うん……あ!」

レインはふと、ティアはまだ竜を見れていないんじゃ無いかと思い、檻の前に着てリュックを前に向ける。

しかし、ティアは無反応だった。

「?」

不思議に思いながら、ティアを出そうと手を入れると、ティアは怯えたようにリュックの隅へと体を縮こませる。

「ティア?………!」

もしかしてと、レインは指先の臭いを嗅いだ。先程の竜水の臭いがまだ付いている。

ティアはこの臭いを嫌がっているのだ。

(この怯え方……一体)

レインはリュックを背負い、ポタンを閉じると、ノノンを見る。

「……行こう」

ノノンは黙って頷くと、先へと歩いて行った。