「ここが竜の小屋だよ」

ノノンに案内されたのは、とても大きな木で出来た建物だ。

小屋というよりは、別荘のような感じだなと思うと、ノノンは構わず扉を開ける。

「ここには、大人の竜がオスメス合わせて六匹いるの」

小屋の中へ入ると、レインは顔をしかめた。

というのも、変な臭いがそこら辺に充満しているからだ。

(何だろう?この変な臭い)

鼻にツンとくるような変な臭いで、今まで嗅いだことが無い。

「ノノン。この臭い何?」

「竜水(りゅうすい)の臭いだよ。竜のご飯で飲み物なんだって」

ノノンが指差した方向には、大きな樽と、バケツが置かれていた。

「竜水……」

「あ、ほら!あそこにいるのが竜だよ!」

ノノンに言われ、檻がいくつもある部屋を見る。

檻の向こうには、確かにティアと同じような姿をした生き物がいた。

近付いてみると、とても大きい。

だが、何かが変だと思った。鱗も鋭い牙と爪も龍と変わらないというのに、その目には生気を感じない。

灰色に濁った瞳と、灰色の鱗。ティアや昔見た龍のように輝くこともなく、置物のようにジッとしている。

レインは竜を観察していて、あることに気付いた。

(竜の背中に、二つの出っぱりがある)

まるで、何かを切り取られたような跡だ。

(あの位置は、翼が生えているところの筈。……どうして?)

レインの中で、嫌な考えが沸き上がってくる。だが、確信はない。

「ねぇ、竜水を見せてもらってもいい?」

「いいよ。私のじゃないし」

一応、ここの村人であるノノンに許可を取り、レインは竜水の入った樽を覗きこんだ。

樽の中には、灰色の水が詰まっている。