その後も、ノノンの声かけのお陰で、薬は見事完売した(主に年配の女性に売れた)ので、レインは絨毯をリュックにしまって、立ち上がる。

「……ティア?」

『ピギィ?』

小さく声をかけると、小さく鳴き声が返ってきた。

「これから、竜を見に行くよ」

『………ピギィ』

どこか不安そうな声で鳴くティアに、レインは心配になる。

「お姉さん、竜の小屋はこっちだよ!」

だが、ノノンに手を引かれ、レインは竜の小屋へと向かった。

その途中、広場を通ったが、何やら太い木の柱があり、先っぽには縄が結ばれていて、縄の先は網になっていた。

網の中には、丸太が沢山詰まっている。更にその下には、台座のようなものがあった。

白夜村でも同じものがあり、レインはそれが何なのかはすぐに分かった。

(あそこで、竜のお肉を焼くんだ)

お祝い事やお祭りの日に、村人が村の中心の広場を囲っているのを、レインは何度も見たことがある。

(……竜の……お肉)

昔はあんなに食べたいと思っていたのに、ティアを見付けてからは、そんな気持ちは吹き飛んだ。

今では、食べられてしまう竜が可哀想で、レインは目を反らす。

この世は、食べるか食べられるかだろう。それが世界の決まりとも言えるし、それを変えることなど出来ないと分かっている。

けれども、やはりレインは心が痛かった。

この中に、生きられることに感謝しながら、命をいただいてる人間は、一体何人いるのだろうか?

(竜は家畜と同じ。けれども、神龍様は神様と同じ)

この違いは、何なのだろう?

空を飛べない、口から火を吐けない、言葉を理解できない。それなら、食べてしまおう。

そういう事なんだろうか?

(……今ここであれこれ考えても、答えはでない)

レインはそう思うと、ノノンの後を着いていく。

その先にある真実に打ちのめされることも知らずに、レインは歩くのだった。