ヒュンッと風を切る音が聞こえる。

狙った獲物へと矢を放ち、撃ち落とす。

本当は兎でも良かったのだが、鳥の肉の方が食べやすいだろうと思った。

レインは撃ち落とした鳥の足を縛って、肩に担ぐ。

「……大地は、時に優しく時に厳しい……だから、自然に感謝する」

自然があり大地があり、人は生きていくことが出来る。大地を怒らせてしまえば、人は生きられない。

だから、感謝をしなければ。当たり前だと思ってはいけない。そう、レオンは言い聞かせてきた。

そして、それは神龍も同じなのだと。

神龍が守るのが当たり前だと人は思っている。だが、神龍は国を守るための道具じゃない。

どんなに神に等しい力を持っていようと、神龍もまたこの大地で生きている「生き物」なのだと。

(私はいつか、この国の真実を知りたい)

神龍が守り、人間が治めるこの国。歴史の奥に沈んでしまったであろう真実。

それを、レインは知りたい。きっとそれを知ることは、姉の死の真相を知ることだと、何となく思った。

レインの知らぬところで、この国の穢れは広がっていく。

だがそれに、まだ誰も気付かない。

(……ノノンがそろそろ起きちゃうかな。急いで帰らないと)

レインは歩く速度を速めて、来た道を戻って行った。