「ノノンのお父さんはどんなお仕事をしてるの?」

「竜を育てて、他の村に売るお仕事だよ。卵から育てるの。でも、私は仕事場に入れてもらえないけど」

「……竜?」

村で飼育されていると言えば、こちらの竜だ。

翼がなく、空も飛べない。火を吐くことも出来ず、五十年しか生きられない存在。

今までは、まるで雲を掴むように実感のない、幻のような存在だった。

だが、その竜はこの村にいる。

「ねぇ?ノノンは竜の卵を見たことある?」

「今日仕事場に入ったけど、高い位置にあったし、お父さんが邪魔で見えなかったの」

(……ということは、金色じゃないってことかも)

ティアが卵だった頃は、キラキラと輝いていて、遠くからでも分かった。

「私、生まれたての竜の赤ちゃんを見たことがないの。一回だけティアちゃんよりも大きい赤ちゃんの面倒を見たことあるけど、生まれてからもう一週間以上経ってたんだ」

「生まれてすぐに面倒を見れたわけじゃないんだね?」

「うん。卵から生まれたら、やらなきゃいけないことがあるんだって。儀式?だったかな……それが終わらないと、赤ちゃんの面倒は見ちゃいけないんだって」

儀式という言葉に、レインは首を傾げた。

そんなに神聖なものなのだろうか?食料や商品として扱っているなら、そんな必要は無いだろうに。

「……気になる?」

「うん。ティアと何が違うのかは気になるかな」

リュックの中ですやすや眠っているティアを見ながら、レインは頷く。

姉も師であるレオンも、竜については詳しく教えてくれなかった。それは、龍のことも同様だが。

教わる前に旅立ってしまったからには、自分で調べて知るしかない。

(師匠の弟子になる前、ティアは龍の姿で生まれると言ってた。そしてその言葉通り、ティアは龍として生まれた)

レオンは何故知っていたのだろうか?龍と竜の卵の違いや見分け方、それをこの村で知ることが出来るかもしれない。

「ノノン。明日、卵を見ることは出来る?出来なくても竜を見てみたいのだけど」

「いいよ!でも、仕事場はお父さんが張り付いてるかもしれないから、見れるとしたら大人の竜かな?飼育小屋にいるから」

飼育小屋という言葉に、レインは胸が痛みながらも、明日竜を見に行こうと決めた。