さわさわと風が頬を優しく撫で、木や草を揺らして音楽を奏でる。

鳥達はお互いを呼び合うように囁きあい、獸達は身を寄せ合う。

他の雑音は一切消え、ここはまるで楽園のようだ。

「……」

ギリッと弓を後ろへ引き、足を少し広げ、上を見上げて狙いを定める。

空を飛んでいる鳥は、こちらに気付いていない。

「……っ!」

小さく息を吐く音と共に、頭上へと矢が放たれ、鳥の体を貫いた。そして、頭を下に向け地面へと落ちる。

落ちた鳥の足を縄で縛って、担ぐように背負うと、来た道を戻る。

今日は立派な獲物を仕留めた。だからこそ、感謝をしなくては。

小屋まで戻ると、切り株の上に座っている青年が、こちらに気付いて微笑む。

膝の上には分厚い本が乗っており、どうやら読書をしていたようだ。

三年とはいえ、その微笑みも、容姿も変わらないなと不思議に思っていると、青年は片手をあげる。

「お帰り、レイン」

「ただいま帰りました!師匠」