死を覚悟するように目を閉じて震えていたが、一向に想像していた痛みはやってこない。

『ピギィ?』

「う……うぅ…………ん?」

可愛らしい高い鳴き声が聞こえ、ノノンは目を開ける。

『ピギィ、ピギィ?』

首を傾げ、こちらを見上げる金色の鱗を持った生き物。

「…………竜の……赤ちゃん?」

目を見開き呟いてから、ノノンは待てよと首を捻る。

(前に世話した竜の赤ちゃんには翼が無かったし、鱗もこんなに綺麗な金色じゃなかったわ)

竜の赤ん坊は、鱗がくすんだ灰色をしていて、大人の竜も同じだ。

日の光を受けても、多少は輝くが、この子のようにキラキラとはしていない。

それに、体も前の竜より小さい。けれども、顔付きや手や鋭い牙は竜と同じだ。

「お前、どこから来たの?」

『ピギィ!』

「ピギィじゃ分からないわ」

手を差し出すと、クンクンと臭いを嗅いでくるが、あまりじゃれつこうとはしない。

「抱っこしてもいいかな」

好奇心からか、ノノンは手を伸ばして抱き上げようとする。

その時―。

「ティアー?」

『ピギィ?』

少女の声が聞こえ、小さな生き物は振り返る。

「ティア!」

ガサガサと茂みが揺れ、頭に葉っぱをくっ付けた赤い髪の少女が出てきた。

ノノンは、少女の赤い髪に目を奪われる。

『ピギィ!』

「駄目でしょう?また勝手にいなくなって」

少女は金色の生き物を抱き上げると、まるで母親のように微笑む。

(リンゴみたいな髪)

「お姉さん……誰?」

ノノンが声をかけると、驚いたようにこちらを見る。どうやら、気付いていなかったようだ。

「私はレインだよ。この子はティア。貴女は?」

「……ノノン」