それなのに、




そんなことはしなくていいと





光にぃに教えられて、





俺は初めて、自分から光の世界に恐る恐る手を伸ばした。







そうしたら、光は本当にあったんだ。








俺は今、






欲しいものは全部手に入った。





昔とは違う形だとしても大事な家族ができて、




気絶した兄さんは目を覚まして、







10年振りに友達ができた。






それだけで、






俺は今幸せだ!ってそう胸張って言える。






心の底から笑えるんだ。







朔乃に声をかけたのは、







もう二度と何も奪われたくない一心でだった。







ただそれだけだったんだ。







「光にぃ……」





俺は、自分の目の前にいる光にぃの顔を伺った。






「妖斗、え、……何で泣いてるんだ?」






そう言われて、俺は初めて自分の両目から大粒の涙が流れていたことに気が付いた。




嗚呼。




そういえば、永らく言っていない言葉がある。






「……光輝さん」






「ん?」







「……あの日、俺を救ってくれてありがとう。






あんたに拾われてよかった。









白龍に出会えて、良かった」




「……っ!ああ」



光にぃは、その言葉に、泣きながら頷いた。