空我先生は、俺に屈託もなく笑いかけた。




「……俺にも、そう思える日が来るんですか?」




気がついたら、俺はそう言っていた。





「あぁ、来るよ。俺が保障してやる。






なぁ光輝、ひとつ賭けをしないか?」




意地悪そうに、空我先生は笑う。


「賭け……?」


「そうだ。今から自分にも他人にも嘘なんてつくな。もっと人を頼れ。




それでもしお前が20歳になるまでに捨てられたら、その時はお前の勝ちだ。




自殺でも何でもすればいい。




捨てられなかったらお前の負けだ。そうなったら、一生自分にも他人にも嘘なんてつくな。人を頼り続けろ」






「先生……」





俺には、ただ縋るように空我先生を見つめることしか出来なかった。





「……大丈夫だよ、光輝」





その言葉だけで、もうダメだった。



涙が滝のように溢れだしてきて、




俺は声を押し殺して泣いた。




「うっ、あっ……っあ、……っ」





止めようと思っても、嗚咽は止められなかった。






そうやって俺は、




その日から空我先生と賭けを始めた。