苦々しい顔をして、空我先生は言った。


俺は思い当たる節があり、それを確認する。


「親友って、もしかして虹蘭初代副総長の……」


幹部が2代目に引き継がれる前に、初代副総長は息を引き取った。噂で聞いたからデマだと思っていたが、まさか本当だったとは……。





「なんだ知ってんのか。そー、……それが俺の親友。俺は、そいつに生かされてる。幸せになるまで死んだら許さねぇって、そう言われた。……そいつがいなかったら、俺は死んでたよ」





自嘲気味に、空我先生は言う。





「……今は、死にたいと思ってないんですか?」




「そうだな。……まぁ、虐待のことが夢に出てきた時は死にたくなるけど、すぐにあの約束を思い出すんだ。




……過去っていうのは、ずっと頭にこびりついて忘れられないもんだ。



でもな、……それがあったって、幸せだって心の底から言えるようになる。



俺は今、愛する妻と子供がいて、同僚に親友がいて、お前みたいな患者を励ますことが出来て、心底幸せだって胸張って言えるよ」