光にぃが倒れてから、一か月が経った。



左足を骨折させられた光にぃは、親と再会したあの日から意識が戻っていない。




私立の松浦は7月1日の今日からテスト休みで、後は3日ほど登校日があってから夏休みなんだ。





俺は今、翼にぃと朔と一緒に光にぃの見舞いに来ていた。
聖里奈と真凛はお昼ごろだからか、さっき二人でコンビニにご飯を買いに行ってくれた。





「……早く起きろよ馬鹿光輝」



病室の中で、目を瞑った光にぃの頭を撫でて、翼にぃは悔しそうに顔をしかめていた。



「マジあの父親許さねえ……何が出来損ないだよ。お前の方がよっぽど出来損ないだろ」



出来損ない……。



その言葉は、俺が利亜さんによく言われていた言葉だった。
まさか、こんなにも身近に似たような暴言を吐かれ、同じような扱いをされて生きてきた人がいるだなんて、想像もしなかった。





光にぃはいつもいつも、優しい顔をして元気に笑ってた。





でも、そんな光にぃが抱えていたものは予想外に暗くて、怖くて……想像するのが恐ろしかった。




実の親に出来損ないと言われ殴られ、蹴られ、あまつさえ骨を折られるだなんて、俺にはとても耐えられない……。