顔の前で、ライターの火がユラユラと揺れていた。



「これ以上近づいたら、こいつの髪を燃やすぞ?」



親父の言葉に、翼咲は苦虫を噛み潰したような顔をした。




「……翼咲、逃げろっ」




俺は、思わずそう言った。




「は?ざけんなよ!誰が置いていくかよ!!俺達5人で逃げんだろ!!!」





「……逃げてくれ、頼むから。







一筋縄でそんな簡単にいかないんだよ。見てわかるだろ?




……それに俺は、もう歩けない」




自嘲気味に俺は言った。






骨が折れた癖に、歩けるハズもなかった。








…………もう誰も失いたくなんかない。





全てを失くした日に、やっと出来たかけがえのない家族。




信じようと誓った大事な俺の弟達。








誰よりも愛した可愛い幼馴染の女の子。




その子の大事な友達で、姫の子。




弟の大事な友達。




みんなみんな失いたくないんだよ!!




もう誰も奪われたくないんだよ!!!