「……翼咲、帰ろう」
スニーカーを脱いで道場に足を踏み入れ、俺は床に座った翼咲に笑いかけた。
「光輝……」
殴ったことを気にしてるのか、気まずそうな顔を翼咲はした。
「なんであたしの彼氏は、連絡もよこさないで勝手にどっかいくのかなぁ。自由気ままっていうか自己中って言うか……」
俺の後ろから桃華が歩いてきて、目の前にいる翼咲に呆れるように言った。
「……いや、えっと……すいません」
罰が悪そうに、翼咲は桃華から目を逸らして謝った。
翼咲弱っ!!
……言い返したりとかしないのか。
「帰るよ」「帰るぞ」
「……うん」
桃華と声を揃えていった。
渋々頷いて、翼咲はゆっくりと立ち上がった。
そして、剣道着を脱いで、私服に腕と足を通した。