ショックだ。ものすごく。恋をしたことがないと、恋をしたくないと、恋を信じていないと、そうはっきり言っていたはずなのに。


過去に、付き合っていた女の子がいたの……?

大志くんは恋をしていた……?


誰かを好きになったことがある……?



「……どれくらい前に付き合ってたの?」

「2年前。でも、すぐ別れた」

「……っ……」



違うよ。違うんだよ、大志くん。私はそんなことが聞きたいわけじゃないんだよ。付き合っていた期間なんてどうだっていい。


どうして隠してたの?どうして嘘ついたの?



「……嘘つき」



恋を嫌っているくせに。本当は恋、したことあるんじゃん。

誰かを好きになったこと、あるんじゃん……っ。



──「デタラメもいいところだな。そこまでくると笑えるわ」



デタラメだって言ってたじゃん。なのにどうして元カノが会いにくるの?
元カノが会いに来て、どうしてそんなに動揺しているの──?


友だちでいたいって、私には言ったくせに。
彼女つくったことあるんじゃん。


私じゃ……どうしてダメなの?



「ごめん、今日はひとりで帰る……っ」



涙が、溢れ出てきた。声がつまる。嗚咽を我慢しているからだろうか。

手で流れてくる涙を拭いながら、立ちすくむ大志くんの横を通り過ぎた。引き止めてくれることを、すこしだけ期待した。だけどその期待とは裏腹に、私の身体はどんどん進んでいく。


風が吹くたびに、涙で濡れた頬が冷える。だけど頭のなかは混乱していて、心はいろんな感情で溢れかえっていて、熱い。


どうしてこんなに泣けるんだろう……?


過去に元カノがいただけ。好きな人がいただけ。それぐらい……。



「……っ……」