「はむっ、むぐっ!」

小人が集めた木の実を、レインは食べ漁っていた。

不思議な色のものばかりで、最初は食べるのを躊躇ったが、覚悟を決めて一つ食べてみると、甘くてみずみずしくて美味しかった。

そのため、先程からずっと食べ続けている。

レインの食欲に、小人はぎょっとしていたが、すぐ慣れたのか次々と木の実を、レインの前に積んだ。

一通り満足したのか、レインはお腹を撫でて息を吐く。

「美味しかった!小人さん達、ありがとう!……あ」

レインはそこで、思い出したように卵を見る。

「卵って何も食べなくても大丈夫なのかな?」

「タマゴ、ウマレル、マツダケ」

卵が生まれるまで待てばいい。小人がそう言ったので、レインは不思議そうな顔で卵を見ながらも頷いた。

(でも、お腹空かないのかな?)

自分だったら、生まれるまで何も食べなくていいなんて思えそうにない。

(……そう言えば、人間ってどうやって生まれるんだろう?龍みたいに卵から生まれるのかな?)

村に行くことはあまり無かったので、レインは赤ん坊がどこからやってくるのかと、いつも不思議だった。

自分は赤ん坊の頃の記憶がないし、姉に聞いても「あなたが大人になったらね」と、やっぱりいつも通りの答えしか返してくれない。

(私が卵だったら、どんな色だったのかな?)

しかし、自分が卵から飛び出す姿を想像して、あまりのおかしさに吹き出してしまった。

「ぶっ………クスクス……あははっ!!げほ、げほっ」

変に吹き出したので、器官に唾が入りむせた。

「「…………」」

小人達は呆然とレインを見ている。例えるなら「こいつやべぇ」という感じだ。

そんなこんなで、レインは小人から草を編んで作った籠を渡され、そこに残りの木の実を入れて背負うと、小人に頭を下げる。

「小人さん達。本当にありがとうございました!」

「「キヲツケテ、イク」」

声を揃え手を振る小人に、レインも手を振ると、卵を抱えて歩き出す。

一本道なので、迷うことはなさそうだ。

「……ねぇ、考えてたんだけど」

レインは卵を見下ろした。

「あなたの名前、私が付けてもいい?」

卵から返事は返ってこない。が、レインは続ける。

「私ね、あなたの名前考えたの。どうせ呼ぶんだもん。生まれる前に付けてもいいでしょう?」

レインはずっと考えていた。いつまでも「卵」と呼ぶのは何だか嫌なので、名前はあった方がいい。

「姉さんが言ってたの。名前はね、お父さんとお母さんが最初にくれるプレゼントなんだって。だから、私もあなたに、名前をプレゼントしたいの!」

考えた名前を呼べる。それだけでワクワクしてきた。まだ生まれていないので、性別が分からないが。

それでも、付けたい名前があった。

「あなたの名前は『ティア』だよ!私の姉さんの名前から取ったの」

オスには向かない名前だろうと思いながらも、レインは姉の名前を取ったものを付けたかった。

「よろしくね。ティア!」