(この子は、竜なのかな?それとも、龍なのかな?)

腕の中の卵を見ながら、レインは考える。

龍なら空を飛べて、火も吐けるし変身もする。けれども、竜ならば空は飛べないし変身できない。おまけに食料や材料にされてしまうのだ。

そう思うと、レインは可哀想になる。

(龍だったらいいな。そしたら、食べられたり、鱗を剥がされたりしないもん)

自分が食べられたり、皮を剥がされたら。想像するだけで怖くなる。

(もし、竜だったらどうしよう?)

腕の中にいる卵に、レインは目を伏せた。

竜として生まれたこの子を、自分は食べたいと思うだろうか?他の龍と違うなら、何をしてもいいのだろうか?

(……やだな。だって、私も同じ人間なのに、赤い髪だから嫌われちゃって辛かったもん)

それでも、自分の側には姉がいた。だから、他の人に何を言われても平気だった。

確かに心は痛かったが、耐えることが出来た。

けれども、この子はどうなのだろう?もしも竜で、それを理由に自分が見捨てたら、この子はどうなるのだろう?

虐げられる痛みを、迫害される悲しみをレインは良く知っている。

だから、この子を同じ目に合わせるなんて、レインはしたくなかった。

(………大丈夫だよ。例え竜に生まれても、私が守ってあげるからね。だから、安心して出ておいで)

幼心に、レインは母親になった気持ちで卵に頬擦りをした。

「そうだ!ねぇ小人さん。その龍族ってどこにいるの?谷って言ってたけど、その谷はどこ?」

レインは一つ思い付いた。この卵はもしかしたら、龍族が落とした卵かもしれないと。

もしそうなら、この子を仲間のいる所に帰せないかと。

だが、ふと不安がよぎる。

(竜として生まれちゃったら、他の龍がこの子をいじめないかな?)

人間と龍ではまた違うだろうが、獣同士でさえ争うくらいだ。もしかしたら、竜は他の龍からいじめられるかもしれない。

(でも、もしそうなら。私が守ればいいんだ)

そして、どこか別の場所で一緒に暮らせばいい。どちらにしても、レインはこの子の味方でいると決めたのだから。

「小人さん、知ってるなら教えて?」

「ショウチ」

小人は頷いて、森の向こうに見える山を指差した。

「アノヤマ、ムコウ、リュウゾク、タニ、アル」

「ありがとう!」

レインは卵を抱えて歩き出した―のだが、二歩で歩みは止まった。

そして、へたりとその場に座り込む。

「………」

「ドウシタ?」

小人が声をかけると、グーっと気の抜けるような音が響いた。

「お腹………空いた………」

「……ショウチ」