蒼さんは、少し困ったような微笑みを見せて挨拶してきた。
気が立っていたのは先ほどだけで、私や流夜くんに怒っているわけではないようだ。
蒼さんが流夜くんに目をやる。
「恋のとこ行くつってもまだ開店前だろ。あがってくか?」
「白(ましろ)は?」
「紫(ゆかり)と翠(みどり)と出かけてる」
「四つ子も?」
「四つ子⁉」
私が素っ頓狂な声をあげると、蒼さんは平坦な瞳をした。
「四つ子じゃねえよ。華取、どうぞ入ってくれ」
私が玄関先で止まったので、蒼さんが中に招いてくれた。
「正確には双児の年子。流夜たちが面白がってそう言ってるだけだから」
蒼さんが呆れたように言うと、流夜くんはくすくす笑っている。
そして続けて説明した。
「白が蒼の嫁さんで、紫と翠は蒼の妹なんだ」



