「そう固くなるな。ただの苦労性な奴だ」


「難し……ただの苦労性?」


「逢えばわかる」
 

軽く言われても、どぎまぎしてきた。


どんな人なんだろう――
 

研究施設の並ぶ遊歩道を歩きついたのは、こじんまりとした住宅街。


研究施設ばかりかと思ったけど、小規模ながらニュータウンのような家が並んでいる。


よくあるのとは違うのは、庭が広いことだろうか。


その中で流夜くんが足を停めたのは『神林』と表記のある建物だった。
 

流夜くんが扉横のインターホンを押すと秒間もなく勢いよく開けられた。


「うっせえ! 何度嫌がらせ来たら気が済むんだあんたは!」


「いや、今日は初めて来たんだけど」
 

猛るのは流夜くんと同年くらいに見える男の人。


怒鳴られても流夜くんは平然としていたけど、いきなり怒られて私はびっくりしてしまった。
 

流夜くんを認めて、その人は「あ」と声をもらした。


「――なんだ流夜か」
 

そして脱力した。