「この中に、対犯罪研究施設があるんだ。城葉都市を作った天科直轄の。そこの所長と学生時代からの知り合いで、今も世話になったり世話かけられたりしてる」
「そういうこと……」
「それで、今から行くのは俺を桜学に招(よ)んでる奴」
「―――」
い、一気に緊張してきた。
流夜くんが年度終わりで先生を辞めるというのは少し前に聞かされている。
完全に、学者一本にするつもりだから、と。
でも、この私立桜宮学園に教師として招かれているとも聞いている。
流夜くんが言うに、同じ学校でなければ少しは気にする周りの瞳も違うというのと、流夜くんの『探し物』は藤城に関する場所には見つからなかったからだそうだ。
行く可能性はない、と流夜くんは言っているけど、呼ばれているのが、かの桜学(さくがく)。
藤城・桜庭も名門として有名だけど、桜学はその上を行く、全国規模で名の知れた学校だ。
幼稚舎から大学部まであって、特に現理事長の与する一族、天科グループは学問に特化した大企業として名がある。



