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「ここは――」


「城葉(きば)研究学園都市。の中」


「それはさすがにわかってるけど、あの……正直私には縁遠いと言うか……」
 

流夜くんの車を降りた私は、すっかり萎縮(いしゅく)していた。
 

隣の県にあるここは、城葉研究学園都市という名を冠する。


名のある大学、進学校、研究施設が意図的に集められた巨大な都市だった。


今の規模になったのは二十数年前。


中心になっているのは天科(あましな)グループという日本有数の企業だ。


「って言うかさっきガードマンぽい人いたよね? なんか向こうが頭下げて来たから私も礼したけど」
 

通ってきた道を振り返る。


「顔見知り。よく来るから」


「……やっぱり私には場違いなのでは」


「いや、用があるのはこの外。だけど、そこに行く前に挨拶しとかないとうるさい奴がいてな」


「……どういうこと?」


「ついて来ればいいこと」
 

楽しそうに言って、手を絡めとられた。


「よく来るって……」