「そうか――


「でもあの! は、遙音くんに発破かけるのとかは、やめてください。これは、あたしと遙音くんの問題で、あたしが話すべきことですから」
 

龍生さんに向いた凛とした瞳に、頼は軽く息を呑んでいた。
 

それからまた視線を落とした笑満は、ぱっと顔をあげた。笑顔だった。


「そういうわけなので。今日はありがとうございました」
 

笑満が深く礼をして、私も慌てて頭を下げた。


さて、何作るか決めよー! と意気込む笑満と私に、龍生さんが最後に言葉をかけた。


「松生の娘ちゃん。これでも俺も、あいつの親代わりだ。遙音を見つけた以上相応の役割は、果たすつもりでいる」


「………」


「あいつのことで困ったことがあったら、いつでも来てくれ」
 

龍生さんの中での、遙音先輩の位置。


笑満は唇を噛んでから、また頭を下げた。


「よろしくお願いしますっ」


「ああ」
 

まだ、笑満は家族に遙音先輩のことを言えていない。


過去があるからだ。


それでも、その先に今、生きているのは確か。
 

凛然とした瞳をするようになった親友を隣に、私は口元を緩めた。
 

……こんな風に笑えるのは、受け止めてくれた流夜くんのおかげだと思った。