「あ、ありがとうございます……」


「うん。だから、変に今の咲桜を変えようとしなくていい」


「……さっきは大人しくなれって……」
 

言ったのに。咲桜が反論してきたから、今度は頭を撫でた。


「咲桜の性格や言動を変えろって意味じゃなくて、今のままで、落ち着いて周りを見てみろってこと。感情を先立たせないものの見方を覚えて、客観視ってものを身につければ、咲桜は今よりもたぶん、生きやすくなると思う。そういう意味」


「……今のは教えてくれるんだ」


「これは俺の主観だからな。口にしないとわからないかと」


「さっきの自信は?」


「それは咲桜も同じものを持ってほしいから、教えない」


「……意地悪の境界線がわかりません……」


「意地悪するより甘やかしたいからな」
 

この、と、咲桜の肩に腕を廻して抱き寄せた。


「可愛い俺の女を?」


「……っつ」
 

咲桜は大きく息を呑んだ。


「……やっぱり負けてしかいないです……」
 

ふむ? こういうときに負けたって思うのか。じゃあ……。

 
咲桜の額にキスすると、「こうさんです……」と小さく言われた。