「笑満が……」


「松生?」
 

咲桜はきゅっと瞳を瞑った。


「~~~笑満がいなくなっちゃいます~!」


「は?」
 

俺が伸ばしかけた手を宙で止めると、咲桜が、がばっと顔をあげた。


目に涙を浮かべて、口を引き結んで睨むように見て来た。


「笑満を遙音先輩にとられました~! 悔しいです~‼」


「………」
 

呆気にとられた。
 

……咲桜にそんな感情があったのか。


「笑満が~~~」
 

わーん、と思いっきり泣き出してしまった。


仕方なく、小さな子にするように背中に腕を廻して抱き寄せ、頭を撫でた。


咲桜は「うう~」とうなっている。
 

……特に女子同士にあると聞く、友人に彼氏が出来た時の喪失感。


友達をやめたわけではないのに、いなくなってしまうという感覚。