「法律を遵守(じゅんしゅ)し、反するものを裁きの舞台にかける。――弁護士である以前に法律家って意識の強い奴だからな。『学校で教える道徳心』が強いんだ。

だから、いくら俺が咲桜に惚れていて在義さんや周囲に認められていても、それが道徳――教師と生徒の関係としては思わしくないと判断したら、『在義様』とか呼ぶほどの人の娘のことでも、白日にさらすだろうな」


「………」
 

黙った。
 

正義心? ……でも、それが『当たり前』なのかもしれない。


在義父さんや周囲の人が認めてくれているけど、世間的にはゆるされないこと。


「つっても、絆は桜庭生だから藤城に来たりはしないし、勿論華取の家やうちにも来はしない。降渡絡みで逢うことがあったら、『在義さんの娘』と『在義さんの後継者の一人』って立場でいれば、教師生徒以上に親しくしても疑われることもないだろう。深く考えるな。咲桜は心配でドツボにはまるタイプだからな」
 

茶化すように言われて、そろりと顔をあげた。


上目遣いに見た流夜くんは、心配ない、とその瞳で言って来た。


「……うん」
 

流夜くんの恋人として、胸を張っていたい。


そう思った。


そのために、今は関係を隠すことも必要なのだと意識する。


そして、いつか誰にもはばかることなく流夜くんの隣に立てるようになったら――