「では、遙音先輩。笑満のことは頼みます。私はここで」


「ああ」


「また明日ね、咲桜」


「うん。じゃね」
 

分かれ道――朝、遙音くんがあたしの腕を引いた場所で、咲桜だけ違う方へ歩いた。


もし、遙音くんと咲桜が重ならない道へ歩き出したら――


「……遙音くん、よくあんな大胆な真似出来たね」


「ん? だってああでもしなきゃまともに話せないかなーって」


「あれでまともに会話出来たのもどうかと思うけど……」


「攫ってでも話せって神宮には言われた」


「流夜くんの入れ知恵か!」


「笑満ちゃんをすきでいられたこと、後悔したくないから。簡単には離さないし」


「………っ」


「……でも、一つ言っておくね?」
 

遙音くんはあたしの左手を軽く握った。


「俺は、神宮たちの側(がわ)へ行く。今は半分足を踏み入れた感じだけど、完全に向こうへ入る。でも、笑満ちゃんをそちらへ連れて行こうとは思わない」


「―――」


「思わない、けど、手放したくもない。……勝手言って、ごめん」