「それは駄目だ。今で、こうしたときちょうどいいんだから」
 

背中に腕を廻されて強く抱き寄せられた。


「俺も背丈ある方だから、背が高いと、咲桜の顔がよく見えるから嬉しいんだけど」


「……そうですか?」
 

な、なんと嬉しい解釈。声が照れる。


「俺も無駄にでかいからなー。いいんじゃないか? 似た者同士で」


「流夜くんはカッコいいからいいんだよ!」
 

がばっと顔をあげると、面喰った様子の流夜くんと視線がかちあった。うあ……。


「これ堂々巡りのフラグだよな」


「そ、だね……」


「お互いさまってことでいいか」


「……はい」
 

今一時訪れる恋人の時間。
 

在義父さんが帰ってくるまでの、これは秘密。
 

交わされた視線がそう囁いた。