少なくともその呼び方で呼ばれる存在を、私は知らない。


気になっていたことを訊くと、流夜くんは一瞬考えるような素振りを見せた。


それから答えた。


「いね――じゃない。いないよ、そんなの」


「―――」
 

―――あ。


流夜くんの答えは否定だった。でも。
 

流夜くん今、嘘ついた。
 

根拠はなく、そう感じてしまった。
 

……なんとなく、食事を再開する。
 

からといって、私の中に生まれたのは不信感ではなかった。
 

ただの淋しさだった。


「今言い直したのなんで?」


「松生に言われたこと思い出した」