「君の記憶から消してほしい。書類は私が処分する」
「ですが――俺一人での検査ですが、機器に結果は残っています。検体も――」
「それを消してほしいと言っている。君に出来ないなら私がやるだけだ」
「―――」
『してほしい』という形で言っているのに、まるで『しろ』と命令されているようだ。
刹那、喉がひくついた。相変わらず、すげえ苛烈な人だ――。
炎の塊だと評される華取在義。
本当にこの人には正義がない――。
正しさを貫くなら、この検査結果の隠ぺいは許されない。
俺もいよいよ腹を括った。
「華取さん」
もう一つ、色の違う封筒を机に乗せた。



