朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】



「君の記憶から消してほしい。書類は私が処分する」


「ですが――俺一人での検査ですが、機器に結果は残っています。検体も――」


「それを消してほしいと言っている。君に出来ないなら私がやるだけだ」


「―――」


『してほしい』という形で言っているのに、まるで『しろ』と命令されているようだ。


刹那、喉がひくついた。相変わらず、すげえ苛烈な人だ――。
 

炎の塊だと評される華取在義。
 

本当にこの人には正義がない――。
 

正しさを貫くなら、この検査結果の隠ぺいは許されない。
 

俺もいよいよ腹を括った。


「華取さん」
 

もう一つ、色の違う封筒を机に乗せた。