朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】



「死なれたら困る。たぶん一回の研究じゃ収まんないから」


「お前こそ他人がサンプルじゃねえか。断る。お前にやるもんなんてない」


「じゃあ今後神宮がなんかDNA検査とかしたくなったら請け負う」


「公的な機関に頼むからいらん」


「……じゃあ無償で請けてやる」


「カネ取る気だったのかよお前は」


「……………………………研究者に背信する行為だが……研究結果偽造してやる……!」


「お前が背信行為したところで誰の益にもならねえよ。簡単に傷付く矜持(きょうじ)に興味ねえ」


「なら……問答無用でいただく……!」


「背信行為どころか単なる傷害行為じゃねえか。吹雪、署に行くついでにこいつ傷害・凶器準備集合・自殺教唆(きょうさ)で突き出してこよーぜ」


「色々付加されすぎだろ! 教唆してねえよ! お前死ぬ気なんてサラッサラないだろ!」


「わー! 待て琉奏! 早まるな! りゅうも! って、え? 集合ってもしかして俺らも含まれてんの? 凶器どこだよ!」
 

臨戦態勢に入った神宮と俺。


慌てた雲居が割って入ってきた。


春芽はいつもの調子を取り戻してくすくす笑っている。
 

そんな詮無い応酬をして、なんとかかんとかもらった神宮の検体だった。


ちなみに傷害ではないし自傷もさせていない。


勿論。納得させて、もらったもの。