「宮司くん――すまなかったね、急な依頼をして」


「いえ、こちらこそ夜中にお呼び立てしてすみません。……お娘さんは、大丈夫ですか?」


「……流夜くんのところだ」
 

華取さんは瞼を伏せる。少し驚いた。あの華取在義が?


「……結構寛容なんですね。娘の夜歩きを認めるなんて」


「咲桜の決断を邪魔しない信条を持っているからね」
 

華取さんは自嘲気味に笑った。


……娘の、決断。その言葉を心の中で繰り返した。


「――では、これを」
 

封筒を差し出す。


華取さんは机に乗ったそれにすぐには手を出さず、また一度、瞼を下ろした。


「……しかし君がよく流夜くんの検体を持っていたね。衝突しているところしか知らなかったから驚いたよ」